KABD-78

犬神家の一族 |
●監督:市川崑●音楽:大野雄二●キャスト:石坂浩二/高峰三枝子/三条美紀/草笛光子/あおい輝彦/地井武男/川口恒/川口晶/金田竜之介/小林昭二/島田楊子/坂口良子/小沢栄太郎/加藤武/大滝秀治/寺田稔/三木のり平/岸田今日子/三國連太郎●147min |
サスペンスとは正反対のミステリー映画の代表です。とにかく登場人物が多く、関係が複雑です。しかし僕にとってはそんなことはどうでもいいのです。このシリーズは別の意味で中毒になりました。
それは「音」です。音が無くても成立する映画もあれば、音が無くては成立しない映画もあります。このシリーズは音を無くしたら、その面白さのほとんどを奪われるといっていいくらいの作り方をされています。音といっても音楽やS.E.(効果音)ではありません。せりふがそうなのです。
登場人物のせりふが途切れることなく流れ続けるのです。ある人物が話し終えると、間髪入れずに別の人物が話し始める。極端になると輪唱に近いくらいの間隔で。まるで沈黙を恐れるがごとくです。
このシリーズは、途中で誰が居なくなろうが死亡しようが全く観客の心にきません。それはミステリーが「バカみたいな結末ばっかり!今までどこにも出ていなかった人物を、最後の5ページでいきなり出したりして何だ!!絶対に推理できない仕組みになっておる。(「名探偵登場」より。笑)」それまで無意味なシーンの積み重ねだからです。それを監督なりにエモーションを生み出す方法として、せりふを使う方法を考えたのではないでしょうか?これがBGMのような、お経のような響きで、聴いていて非常に心地良い(余談ですが、僕は民族音楽「ガムラン」が大好きで、あれをお経だと思っています。)です。後に製作された「天河伝説殺人事件」は、この手法が激しすぎてせりふが聞き取れないくらいでしたね。
犬神家の一族は、角川映画第1回記念作品。そして、「助清(すけきよ)の逆さになった足」で有名ですね。この作品は大野雄二による本来の「音楽」も美しいので、サウンドトラックもお勧めします。後の見所は、今は渋い役者で定評のある地井武男の強姦シーンでしょうか?(笑)
悪魔の手毬唄は、角川から東宝に移っての金田一シリーズ第1弾。市川組と言っていいほどそっくりそのままキャストを引き継いでいます。そして作風もそのままです。残念なのは権利の問題で、いつになったらDVD化されるか判らないことです。(泣)LDだと、時間が長いので必ず2枚組み3面になってしまうので、つらいんですよ。せっかくの「お経」が途切れて。(爆)2003年11月21日にDVDで発売になりました。もちろん購入。(笑)
それはともかく、東宝のシリーズは横溝正史特有の「血縁関係の不幸」もさることながら、「愛するがゆえの犯罪」という描写が多く見られる様になります。これは監督の意向でしょうか?
脇役として、三木のり平と大滝秀治が必ず出てくるのですけれど、実のところ1番事件のカギ(または解決の糸口)を握っている「美味しい」キャラクターです。
獄門島は、東宝第2弾。俳句の句に見立てて殺人が繰り返されていく、前作と同じプロットの映画。原作と犯人が違います。3つの句が出てきますが、実は地元のある山に、この句の1つが刻まれた石碑があります。「哀れやな、兜の下のきりぎりす」さて、誰が詠んでどんな見立てをされたのでしょうか?考えてみると、このシリーズは昔の映画にしては珍しく、肉体が損傷するシーンが残酷ですね。
市川崑と言えば、「極太明朝体」で有名です。オープニングでスタッフ紹介によく利用されます。↓
本当はもっと太いのですが、独特の美がありますね。学生のころは日本語よりも英語の方がデザインする上でかっこいいと思っていましたが、今改めて見ると日本語も美しいです。何と言っても「のり平」という字がカッコ良く見えますからね!本作品では、オープニング以外にも効果的に使われています。庵野秀明監督が影響を受け「エヴァンゲリオン」でも使用されました。
女王蜂は、東宝第3弾。話に「月琴」という楽器がかかわってきます。以前じゅんしぃから、「ヨコハマ買い出し紀行」という漫画を借りたことがあるのですが、主人公が月琴を弾くのです。見た瞬間に、「君は…、琴絵さんを幸せには、できなーーいっ!!」がしゃーんっ!という映画のシーンが頭に何度も浮かびました。強烈です。(笑)化粧品会社とのタイアップのせいで、等々力警部がおおよそ物語に必然性の無い「商品のキャッチコピー」をつぶやきます。また、冒頭の悲鳴は「犬神家」の悲鳴と同一です。会社が違いますが、使っていいのでしょうか?
病院坂の首縊りの家は、東宝第4弾。石坂浩二主演としては、最後の作品になります。当時、金田一シリーズとしても最後にするつもりだったらしく、ポスターなどのキャッチコピーは「これが最後だ!」になっています。見所は桜田淳子の錯乱した姿ですか。(1人2役と言わない辺り…。笑)
ついに最後まで等々力警部は登場し続けました。まさか「よーし、わかった!」が、後に「繰り返しギャグ」として不動の地位を確立するとは夢にも思わなかったでしょう。ちなみに「よーし、わかった!」は、どの作品でも3回言い、最後は必ず、「よーし、わかった!…ワシが間違っとった。」になるのです。
普段映画は画面に集中するのですが、このシリーズはそんなにかしこまって見ていません。その代わり、普段の映画よりも繰り返し見て(聴いて)います。噛むほどに味が。するめイカのようなシリーズです。連続してなく、1本で完結しているので、どれから見ても、あるいはどの順番で見ても楽しめるでしょう。01/08/30 |